青空「絆」プロジェクト ~2011夏の陣~ 早稲田 暁生 プロジェクトレポート

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プロサーファーや海をこよなく愛するモノが中心となり、放射能や震災の影響により公園や校庭、海岸などで遊ぶ事が制限(または自制)されるエリアに住む子供達とその保護者達を対象とした『青空の下、東北の思い切り遊べない子供たちへいっぱいの笑顔をあげよう!』プロジェクトが発足。
企画の発起人は、WE ARE ONE などのボランティア活動にも積極的に参加するGO NAMINORI のオフィシャルBLOGER として活躍している早稲田アケオ。
8月20日、21日に千葉県鴨川市で開催されたプロジェクトのレポートをご覧ください。


青空「絆」プロジェクト~2011夏の陣~概要
3月11日の東北地方太平洋沖大地震により被災された方々を対象とし、鴨川の海で、笑顔になれる夏の思い出を!!
主催:青空・絆プロジェクト
開催日・時間:8月20日午前10時~8月21日午前11時
会場:千葉県鴨川市 前原海岸(20日)・太海海岸(21日)
対象:放射能や震災の影響により公園や校庭、海岸などで遊ぶ事が制限(または自制)されるエリアに住む子供達とその保護者達。
参加費用:無料(支援金でまかなう)
被災地からの参加人数:15名(うち子供11名)
イベント内容:すいか割り・波乗り・BBQ・花火・砂遊びなどの夏遊び
協力:●川井 幹雄(プロサーフィン連盟顧問・JPSAロングボードディレクター・鴨川サーフィンクラブ会長)
●JPSA・JPLA・JPBA公認プロ
小川直久、小川幸男、小川啓、小野嘉夫、北田力也、君塚友則、熊倉一真、斎藤要、関田英俊、田中英義、中村竜、夏目崇、東川泰明、早稲田暁生、渡邉将人、渡辺広樹、渡辺学、上田純子、斉藤ゆり、石井勇貴、近藤義忠、岡田奈美、近藤まゆみ、佐藤アキコ、角田恵、大村奈央、福島寿実子、西山千草、芝麻美など
●民宿 松葉屋
●医療チームCHARASHIMA
●ライフセーバーしょうた(専任)
後援:日本全国の有志の皆様、鴨川サーフィンクラブ、鴨川漁業組合、勝浦海上保安庁、前原海岸ライフセーバー、大海海岸ライフセーバー

・夏の陣前日~たくさんの想いを、たくさんの笑顔に変えるために~
いよいよ、その時が近づいてきた。
僕の電話はこの日が近付くにつれ鳴りっぱなし。色々な人の想いが、より多くの笑顔を生みだす事に一直線に向かっているのを実感していた。
各地からのこの企画への賛同者達が、千葉は鴨川へと向かう。
実際、不安だらけだった。
自分を含めこういった動きは初めての人が多かったし、どんな段取りをしたらいいか?どんな用意を誰がしたらいいのか?ほんとに資金は集まるのか?参加者は現れるのか?
ほとんど初対面の者同士でのミーティングは期待通りに機能せず、通じ合っている想いの「絆」を信じるしかなかった。
事務局スタッフは各々自分の仕事の片手間で、様々な人からアドバイスをもらいながら、なんとか準備をやりくりするシロート軍団。
ただ繰り返されたキーワードは「子供たちの笑顔のために」という信念の言葉。
前日の天気予報でもプロジェクト当日は雨の予報だったし、被災地からの参加者も急に冷えこんだせいか風邪などの体調不良によりキャンセルが相次いだ。
それでも、僕達はそれぞれの決意を固めていた。
・始まり
8月20日(土)AM10:00 天候 曇り
鴨川シーサイドポイントに集合。

「心ゆくまで楽しんで!」
ローカルでもありレジェンドサーファーの川井幹夫さんの言葉をいただき、開会式はスタート。

今回のプロジェクトに当初から尽力する清川太郎さんからも開会の挨拶、軽くスケジュールの説明とお互いの顔合わせをしてビーチへ。
テントをたてた砂浜、目の前にはモモ~腰たまに腹くらいの、子供達が海を楽しむには「これ以上はない!」くらいのファンな波がたっていた。心配していた雨も降らず、波もちょうどいいなんて!
鴨川の人達だけでなく、鴨川そのものが子供達を笑顔にするために迎えいれるための魔法を掛けてくれたようだ。

広いビーチについた子供達には、すでにそれだけでも何も必要ないかのようだった。
いまだに続く震災の影響で、ただ外で遊ぶことすらままならない子供たちは、気がねすることなくかけまわり、砂を掘り、山をつくり、本来のパワーを惜しむことなく発揮して嬉しそうに遊んでくれた。

でも、僕達は、もっとたぶん、遊びのエキスパート。「もっと盛り上げてやるからなっ!」
うずうずしてくるのを感じた。
ここで今回のプロジェクトのために来てくれたライフセーバー、そして現地のライフセーバーからも挨拶をもらい、安全第一をもう一度胸に誓う。
なんと、今回の~夏の陣~のスタッフにはライフセーバーだけなく緊急医療チームの先生と看護師の方にAEDなどの医療器具持参で来ていただき、できうる限りの安全態勢を整えることができた。
・すいか
スイカ割りでもやるか~っと、スイカを一つ置いてみる。
ん~どうせなら・・・
子供達が掘った穴を少し拝借し、おっさんを埋め、スイカ(いや、おっさんだけどね)をもう一つ増やす。

おっさんを埋めただけでも子供は大喜び。
もちろん大人も爆笑。
「スタッフが楽しんでなかったら、参加者も楽しめない。」が僕達の考え。
そうして満を持して、ハラハラドキドキのスイカ割りはスタート。

実はこの埋められてるおっさんもこのプロジェクトを当初から支え、あちこちに手を回す重要なキーパーソン、BVGこと鈴村政浩さん。
みんなで、おっさんのほうへ行かないように、でもすぐ隣にあるスイカのほうへ行くように教えてあげる。
「もっと右!」
「前前!」
「少し左!!」
「あ~~~~~あぶなーい!!少し右!」
実際に絶対おっさんをたたかないように。そこら辺を教えるのも、遊びのルール。

お兄ちゃんが手を取って妹を助ける心温まるシーンも~

この頃には、子供達だけでなく、初対面の親御さんや有志で参加してもらったボランティアメンバーもリラックスムード、ほのぼのした雰囲気に包まれ始めた。
・サーフィン体験
いよいよ、見せどころが来た。
今後、年に何回かこのプロジェクトをやろうとしているけれど、たぶん海に入れるのは、この時期か、よっぽど暖かい地域まで移動できる時だけ。
千葉、湘南、東京から大勢のプロサーファー達が集う。

本当は、もっとたくさんの人が「来たい!」と言ってくれていたが、
すでに参加する子供の人数を大きく上回るプロサーファーやローカルが集まってくれていたので「ぜひ、次回にそのパワーをまわしてください!」と伝えさせてもらった。
海へ入る前に日本を代表する鴨川のローカルプロサーファー小川直久プロから子供達へ激励のメッセージ。
直久プロは震災後すぐにチャリティーステッカーを作るなど、最先端でこの未曽有の災害の復興へ向けて動いている人物でもある。
子供たちにダイレクトに届く挨拶は、さすがだった。
鴨川からは他にも、開会のあいさつをいただいた川井幹夫さん、ローカルの榎本さん、心良くこの企画に参加してくれた牧野優介プロ、直久プロの弟のHAPPYMANこと幸男プロ、VOLCOMからたくさんのプレゼントを持って現れた渡辺将人プロ、エアマスターの北浦俵太プロ、伊良湖出身で鴨川で腕を磨き先日プロ資格を得た早川広起プロ、さらにロコボーイで先日行われたNSA全日本選手権で4位に輝いた(?)AOIとその良きライバルでブラのこうへーも来てくれた。そして湘南からもはるばる熱い気持ちと共に参加していただいた中村竜プロと斎藤要プロ、グランドチャンピオンの大村奈央プロといつも笑顔でニコニコの福島寿実子プロ。さらにはBBプロも来てくれて、「海の学校プロジェクト」と僕らを繋いでくれた西山千草プロや芝麻美プロが参加してくれた。救助のスペシャリスト、ライフセーバーのショウタも気合いをいれる。

そんな超豪華な海のエキスパートに囲まれて、子供達が楽しまないはずがない。
サーフィン初体験の子も経験した子も、サーフィンやらない子も、みんな海でいっぱい楽しんでくれた。いっぱい笑ってくれた。
当初1時間程度と予定していた波乗りは、あっという間に2時間半が経過した。

・BBQ
海でみんなが楽しんでいる間、別のスタッフは一足先にBBQの買い出しと準備へ。
今回、宿としてだけでなくプロジェクトの夜の開催地として胸を貸してくれたのは鴨川太海海岸の目の前にある絶景の民宿「松葉屋」。

右の写真は、BBQの支度、そして焼き係りまで大活躍だった自称「焼きガールズ」(・・・ガールズ?)。他にもたくさんの方が尽力してくれた。
「松葉屋」にはすでに多くの人からいただいた支援物資が届いていて、トウモロコシやトマト、肉やソーセージ、鴨川で採れたてのムール貝や「子供達に練ってもらってBBQに参加してもらえば?」と漁協組合からいただいたトレーにいっぱいのサンガ焼き。
たくさんの協力者の存在を、再度実感しながらBBQはスタート。


このころには、子供達どうしも、初対面のスタッフどうしもだいぶ打ち解けてきていて、色々な場所で協力しあったり、笑いあったりする場面が見えてきて、とてもいい雰囲気だった。
参加者みんなで力を合わせたBBQは大盛況に終わった。
・花火
花火大会でもするつもり!?
と言われそうなくらいの花火!花火!花火!
今回いただいた支援物資の中でも目を見張る量で、次回もそのまた次回も使えるんじゃないかって量が集まっていた。
もちろん子供達は大喜びで、量とか関係なく、全部使いきっちゃうんじゃないかってほどの勢いだった。朝からずっと動き通しだってのに・・・遊び盛りの子供達の体力は半端じゃない。
中学生のお兄ちゃんスタッフ達が中心になり、安全に気をくばり、子供たちが夕暮れの景色を鮮やかに彩った。

この夜、子供達には花火以外にもう一つ素敵なプレゼントが、スタッフとして参加してくれた若松ファミリーが用意してくれた、光る輪。
こちらもかなりの大人気で、子供達はもうあっちこっちで騒ぎまくっていた。

子供達は楽しすぎて眠りたくないようで、少しでも遊ぼうとしていた。
僕達スタッフはそんな子供達と楽しむ一方で、スタッフ同士で互いに言葉をかわし親睦を深めながら、一回目の開催を喜ぶと共に、たくさんの浮き彫りになった反省点をどう克服するか、そしてどう二回目に繋げていくかを話し合った。
・宝探しとドッヂボール
二日目の朝が来た。
この日もどんよりくもり空。なんとか昼までもってくれと願う。
民宿「松葉屋」には、前日から残っているスタッフとはまた別に、たくさんの人がこのプロジェクトのために来てくれていた。プロサーファーも3名新たに来てくれた。
朝早くから高めのテンションで現れた君塚友則プロ、関田英俊プロ、熊倉一真プロらとともに子供達より一足先にビーチへ。
支援品としていただいた、景品の当たるおみくじゲームのおみくじだけを、ビーチに埋める。景品は今流行りのワンピースのおもちゃ。
「みんな~海行くよ~~」
朝ごはんを食べ終わった子供達はもう昨日一日ですっかり慣れていて、「次は何をしてくれるんだ??」とばかりにキラキラした瞳で後についてくる。
みんなが海につくと、5m×5mほどに仕切った区画の中で宝探しはスタート。
最初は6歳以下の子で制限時間45秒。
小さい子には、お兄ちゃん、お姉ちゃんや保護者の方がサポートし、見つけられない子に見つけた子がプレゼントしてあげるなど、お互いを想いやる微笑ましいシーンがたくさんあった。年下の小さな子供達から、お姉ちゃんお兄ちゃんの子供達へと交互にピンク色のくじを探し出す。

宝探しが終わると次はドッヂボール。
その頃には各自あだ名もついた個性たっぷりのスタッフと、ノリノリのプロサーファー達が盛り上げながら、チーム分けから熱戦を繰り広げた。

朝から元気いっぱいの子供達(と子供な大人)は、砂浜を転げながら思い切り楽しんだが、
少しすると今まで耐えてくれていた天気が崩れ、雨が降ってきて予定より少し早く宿に戻った。
・プレゼントと、お別れ
民宿に戻ると、各地から送られてきた手作りのアクセサリーやフォトスタンド、オモチャや子供服等、当日スタッフが持参してきたたくさんのプレゼントが手渡された。

それは、僕らスタッフの誰もが予想できないくらいの量で、受け取った子供達は大興奮。本当に嬉しそうにはしゃいでいた。
中にはどう配っていいかわからない多様で豪華なグッズもあって、ジャンケン大会をして、勝った子供と保護者に順に持って帰ってもらった。

こうして2日間にわたる、青空「絆」プロジェクト、第一回目の~2011夏の陣~は幕を閉じ、僕達はそれぞれの想いを抱いて帰路へとついた。
とてもいい動きにはなったかもしれない。
でも、これで終わりではない。

このプロジェクトを通して、そして終わったあと、参加してくれた子供達から、そして保護者達からたくさんのメッセージを受け取った。
「本当に参加して良かった。」
「すごい楽しかった。」
「次はいつ?絶対行くんだ!って、息子が言っています!」

期間中は結局、空を見上げても晴れ間という晴れ間は見えなかった。
けれど、最初不安だった僕達の心の中は、参加者達の喜びの声を聞くたびに、笑顔を見るたびに、まぎれもなく晴れ晴れとしていた。
我が子を想い、幸せを願う親と、親に精一杯笑いかける子供達との「絆」はより一層の愛を育んだ。
それを見たスタッフ同士の「絆」は次の青空へ向けて、より一層の結束を固めた。
今回のプロジェクトを支え、成功へと導いた全ての「絆」はより太くなり、確実に次の青空を叶える力になる。
子供達の瞳から青空が決して消えぬよう、僕達はこれからもずっと、心から願おう。
・この青空「絆」プロジェクトに参加、そして支援してくださった皆さまへ
支援金や物資を届けてくれた皆様、受け入れを快諾して頂いた鴨川の皆様、ブログ等で呼びかけ、宣伝してくれた皆様、当プロジェクトに参加してくれたすべての皆様に感謝します!
第一回目となった今回の~夏の陣~は皆様の尽力のおかげで無事に成功を収めることができました。
今もどこかにマスクをつけて外出しなければならない子供達がいます。壁と天井に囲まれた室内でしか遊べない子供達がいます。安心して遊べる場所がなくて困っている子供たちと、そしてその子供を愛する親がいます。
今回、僕たちはそういった親子に「少しでも安心できる遊び場所と楽しい遊び」を提供することができました。
人の集まる公園や、海、山には、青空があり、遊ぶことに長けた「ガキ大将」がいます。
ときにサッカー少年だったり、海の家のお兄ちゃんだったり、木のぼり名人だったり・・・
鴨川の海という公園で、たくさんの賑やかで優しい「ガキ大将」と遊んで笑った夏は、きっと子供達の一生の宝になったことと思います。
今後、今回の震災による影響は長期にわたると予想される中、青空「絆」プロジェクトでは今回のような活動をできれば年2~4回程度、5年、10年と続けていきたいと考えています。
全国のみんなの「何かしてあげたい」と思う心を少しずつ集め、被災地の方達に大きく、ダイレクトに届けられるよう、そしてたくさんのかけがえのない「笑顔」を生みだしていけるようなプロジェクトになるよう、今回参加いただいた方はもちろん、より多くの方にご参加、そしてご支援いただけるようよろしくお願いします。

平成22年 8月26日
青空「絆」プロジェクト  早稲田 暁生